書籍
MONARQUÍA INDIANA · 1615
原題Los veinte y un libros rituales y Monarquía indiana
インディア王国誌
1615年セビーリャ初版・全三巻二十一書 日本語全訳
フアン・デ・トルケマダが1615年に刊行した全三巻二十一書のヌエバ・エスパニャ史・民族誌・宣教史の日本語全訳です。John Carter Brown Library所蔵初版本をInternet Archive公開画像から底本として用いました。
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トルケマダの『インディア王国誌』第一巻は、全二十一書のうち最初の五書を収め、ヌエバ・エスパーニャの住民の起源、諸王国の歴史、地域の地理、スペイン人による征服とその後の出来事を扱います。先住民の過去を征服以前から長く叙述する点に特色があり、メシカだけでなく、テスココ、トラスカラなどの勢力を含む複数の歴史を並べます。後続巻の習俗論と宣教史の前提となる歴史的な舞台を整える巻です。
起源と移住の説明では、土地に先に住んでいた者と新たに来た者の関係、都市の建設、王位の継承や同盟が重視されます。巨人がいたという伝承なども語られ、著者は年代の不確かさを認めつつ、出来事の順序を確定しようとします。聖書や古代の著者との比較を重ねる方法は、先住民の伝承をキリスト教的な世界史の中へ位置づけようとする試みでもあります。
王国間の争い、王族の逃亡や即位、トラスカラの定住など、政治史の細部が積み重ねられます。また、支配者の宮廷や珍しい鳥を集める行為、各地方の主要集落といった記述から、権力と都市の生活を知ることができます。地理的な対象はメキシコ盆地に限られず、ニカラグアの地名や集落などにも及び、ヌエバ・エスパーニャを周辺地域と結びつけて描いています。
第四書を中心とする征服叙述では、コルテスの進軍、モテクソマ側の評議、ナルバエスの到着、トラスカラ勢との協力、首都をめぐる戦闘が展開します。続く叙述には北方探検や副王の統治、航海に関する記録、日本からの書状も含まれます。征服を一度の戦いで完結させず、新たな統治と遠隔地への活動に続く過程として捉える構成です。
著者は先住民の政治的な知恵や社会の複雑さを伝える一方、征服の苛酷さを住民の罪に対する神の処置として説明します。これは史実の中立的な因果関係ではなく、フランシスコ会士としての歴史解釈です。伝承、以前の記録、宗教的議論を重ねた書物として読むことで、征服以前の諸社会についての情報と、十七世紀初頭にそれらをどう整理し評価したかという二つの層を検討できます。
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『インディア王国誌』第二巻は第六書から第十四書までを収め、第一巻の政治史から、宗教、儀礼、社会制度、日常生活を比較する議論へ軸足を移します。神々と神殿、犠牲や祭司、暦や祭礼に関わる事柄から、統治、裁判、婚姻、子育て、農業、葬送へと対象は広範囲です。先住民の制度を個別に説明すると同時に、古代世界や聖書に見える事例と照らし合わせるのが基本的な方法です。
宗教を論じる部分は、人間が神を知る能力や魂の性質といった神学的な考察から始まり、像の製作、供物、犠牲の起源へ進みます。祭司が鳥の声や蛇の動きを前兆として解釈すること、雨の徴に応じて香を供え、山の小像を作ることなど、具体的な儀礼も詳しく記します。信仰が天候、農耕、病気や死への不安と結びついていた様子が、著者の宗教的評価を通して伝えられます。
政治と法の記述では、統治者への服従がどのような条件で正当となるかを論じ、裁判官の職務とその扶持に充てられた土地の収益を説明します。職務に付随する収入が相続されないとする記載などは、制度の仕組みへ目を向けた箇所です。刑罰や親族関係に関する規定は、ローマの法や聖書の戒めと比較され、共通点と相違点が著者自身の学問的枠組みに沿って整理されます。
家庭と生活については、婚姻、離縁、出産、乳離れ、子どもの教育、嫁ぐ娘への訓話などが取り上げられます。農業では水路による灌漑に注目し、ペルーの工夫にも比較の視線を向けます。領主の死を各地へ知らせる葬送の慣行や、人々の身体的特徴を説明しようとする議論もあり、宗教だけに限られない広範な人間社会の記述となっています。
こうした比較は、先住民の習俗が他の諸民族にも見られることを示す一方、信仰を悪魔に帰し、自然を当時の学説で説明する限界も持ちます。とりわけ犠牲や身体についての一般化は、著者の伝聞と価値判断を含みます。第二巻は、個々の儀礼や制度に関する史料としてだけでなく、宣教師が異文化を普遍的な宗教史・社会史へ組み込もうとした知的な営みを読むためのまとまった資料です。
第III巻の詳細概要 第III巻の詳細概要を閉じる
『インディア王国誌』第三巻は、ヌエバ・エスパーニャへのキリスト教宣教、修道会の展開、宣教師の生涯を中心に全体を締めくくります。第十五書はコルテスが宣教の担い手を求めた経緯から始まり、マルティン・デ・バレンシアと仲間たちの派遣、渡航、到着、教化の実践を詳述します。先住民の歴史と習俗を扱った前二巻に対し、本巻では征服後の宗教的な変化が主題となります。
初期の宣教については、派遣に伴う訓令や特許状、修道士たちを迎えるコルテスの態度、領主や有力者への説明が記録されます。修道士が少年たちを集めて教え、まだ土地の言葉を知らない段階で意思を伝え、やがてその言葉を学んで説教するまでの過程が描かれます。子どもたちは受け身の学習者だけでなく、教えを伝え、宣教師の活動を助ける存在として叙述されています。
教会の建設、先住民の言語による教理教育、旧来の神殿の破壊をめぐる議論などから、改宗が生活空間や共同体の組織を変える活動でもあったことが分かります。工芸技術の習得に関する逸話も含まれ、先住民が織機などを観察して技術を学んだとする記述は、宗教以外の接触の側面を示します。著者はこれらを教化の成果として評価し、修道士の努力を強く前面に出します。
後半では、秘跡を行う権限や司教・修道会の関係、教皇と王の命令、管区と修道院の編成、管区長の継承が扱われます。制度の歴史に続いて、清貧、慈愛、語学の修得、病苦、死と埋葬にまつわる人物像が積み重なります。遺体や修道服が崇敬の対象となる場面、奇跡的な出来事の報告もあり、宣教史は同時に聖なる模範を示す伝記集の性格を持っています。
神殿破壊の弁護や旧来の宗教への否定的な評価は、フランシスコ会の立場を示すものです。奇跡についても信仰上の証言として読む必要があります。その一方で、言語を学ぶ実務、教育への先住民の参加、修道院と町の関係、聖職者の権限争いなど、教化が実際に進められた条件は具体的です。本巻は、植民地社会を形成した宗教制度と、それを正当化する記憶の作られ方を併せて伝えています。
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- 原刊
- セビーリャ、マティアス・クラビホ、1615年
- 翻訳版
- 3706頁
- 図版・挿図
- 0点
- 原刊言語
- スペイン語
SOURCE & PUBLICATION DATA
底本・公開情報
- 底本
- Juan de Torquemada, Los veinte y un libros rituales y Monarquía indiana, 3 vols., Sevilla: Matías Clavijo, 1615. John Carter Brown Library, call number 1-SIZE B615 .T687v.
- 権利・利用条件
- 1615年原刊の内容はパブリックドメインです。John Carter Brown Libraryは、Internet Archiveを含む同館デジタルコレクションをCreative Commons Attribution 4.0 International(CC BY 4.0)で提供し、クレジット表記として「Courtesy of the John Carter Brown Library」を求めています。本版は同館所蔵本のデジタル画像およびOCRを原文確認に用い、底本画像そのものは転載していません。
- 各分冊の底本・公開条件
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第I巻
インディア王国誌 第一巻
Monarquía indiana, Parte I
- 原刊
- セビーリャ、マティアス・クラビホ、1615年
- 構成
- 第一部・第一書から第五書・PDF 1,262頁
- 底本
- Juan de Torquemada, Los veinte y un libros rituales y Monarquía indiana, 3 vols., Sevilla: Matías Clavijo, 1615. John Carter Brown Library, call number 1-SIZE B615 .T687v.
- 権利・利用条件
- 1615年原刊の内容はパブリックドメインです。John Carter Brown Libraryは、Internet Archiveを含む同館デジタルコレクションをCreative Commons Attribution 4.0 International(CC BY 4.0)で提供し、クレジット表記として「Courtesy of the John Carter Brown Library」を求めています。本版は同館所蔵本のデジタル画像およびOCRを原文確認に用い、底本画像そのものは転載していません。
第II巻
インディア王国誌 第二巻
Monarquía indiana, Parte II
- 原刊
- セビーリャ、マティアス・クラビホ、1615年
- 構成
- 第二部・第六書から第十二書・PDF 1,189頁
- 底本
- Juan de Torquemada, Los veinte y un libros rituales y Monarquía indiana, 3 vols., Sevilla: Matías Clavijo, 1615. John Carter Brown Library, call number 1-SIZE B615 .T687v.
- 権利・利用条件
- 1615年原刊の内容はパブリックドメインです。John Carter Brown Libraryは、Internet Archiveを含む同館デジタルコレクションをCreative Commons Attribution 4.0 International(CC BY 4.0)で提供し、クレジット表記として「Courtesy of the John Carter Brown Library」を求めています。本版は同館所蔵本のデジタル画像およびOCRを原文確認に用い、底本画像そのものは転載していません。
第III巻
インディア王国誌 第三巻
Monarquía indiana, Parte III
- 原刊
- セビーリャ、マティアス・クラビホ、1615年
- 構成
- 第三部・第十三書から第二十一書・索引・PDF 1,255頁
- 底本
- Juan de Torquemada, Los veinte y un libros rituales y Monarquía indiana, 3 vols., Sevilla: Matías Clavijo, 1615. John Carter Brown Library, call number 1-SIZE B615 .T687v.
- 権利・利用条件
- 1615年原刊の内容はパブリックドメインです。John Carter Brown Libraryは、Internet Archiveを含む同館デジタルコレクションをCreative Commons Attribution 4.0 International(CC BY 4.0)で提供し、クレジット表記として「Courtesy of the John Carter Brown Library」を求めています。本版は同館所蔵本のデジタル画像およびOCRを原文確認に用い、底本画像そのものは転載していません。
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- 更新日
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第I巻
インディア王国誌 第一巻
1,262頁第II巻
インディア王国誌 第二巻
1,189頁第III巻
インディア王国誌 第三巻
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