アロンソ・ラミレスの不運の表紙

書籍

INFORTUNIOS DE ALONSO RAMÍREZ · 1690

原題Infortunios de Alonso Ramírez

アロンソ・ラミレスの不運

1690年メキシコ刊・世界周航と海賊捕囚の記録 日本語全訳

Carlos de Sigüenza y Góngoraカルロス・デ・シグエンサ・イ・ゴンゴラ

プエルトリコ生まれのアロンソ・ラミレスが、フィリピンでイングランド人海賊に捕らえられ、太平洋・インド洋・大西洋を経てユカタン海岸に座礁するまでの遍歴を、シグエンサ・イ・ゴンゴラが1690年にまとめた物語的報告の日本語全訳です。

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プエルトリコ生まれのアロンソ・ラミレスが、貧困から故郷を離れ、ヌエバ・エスパーニャとフィリピンを経て海賊の捕虜となり、長い漂泊の末にユカタンへたどり着くまでを語る物語的報告です。シグエンサ・イ・ゴンゴラが一六九〇年にまとめ、全七節で生い立ち、遍歴、捕縛、解放、遭難、陸上での苦難を展開します。副王ガルベ伯への献辞も備え、苦難の経験を公に語り、権力者の保護につなげようとする性格を持っています。

冒頭では、父の仕事と家族の貧しさ、母から受けた信仰の教えが語られます。故郷を出たラミレスはヌエバ・エスパーニャ各地で働き、メキシコ滞在を経てアカプルコからフィリピンへ渡ります。こうした経歴は、一人の職人が仕事を求めてスペイン帝国の港と都市を移動する生活史としても読めます。海賊に襲われる以前から、安定した暮らしを得られない事情が物語を動かしており、単なる海上冒険の導入以上の意味を持つ部分です。

フィリピンでイングランド人海賊に捕らえられた後は、海上と陸上の略奪、暴力、強制的な航海、捕虜としての忍耐が続きます。太平洋、インド洋、大西洋を通る移動は、自由な探検ではなく他者に進路を決められた経験として描かれます。解放された後も、自分たちの位置や向かう先が分からず、ついに海岸へ座礁します。渇き、飢え、病気、死に苦しみ、カトリックの人びととの遭遇によって、そこがユカタンであると知る展開は、海難と救済の物語を強く結びつけています。

陸へ上がってからも苦難は終わらず、テホスコ、バリャドリード、メリダでの経験と、メキシコへ来た理由が語られます。信仰への感謝、海賊の残虐さ、援助や妨害を行う人びとの姿は、語り手の正当性を形づくる要素でもあります。本書ではラミレスの一人称の証言と、それを整えたシグエンサの文章が重なっているため、すべてを無媒介の航海日誌とみなすことはできません。港を結ぶ世界規模の交通、帝国の周縁で暮らす人の不安定さ、宗教的な自己理解、救済を求める語りの形式を併せて読むことで、十七世紀の移動経験を多面的に捉えられます。

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原刊
メキシコ、ベルナルド・カルデロン未亡人相続人印刷所、1690年
翻訳版
64頁
図版・挿図
1点
原刊言語
スペイン語

SOURCE & PUBLICATION DATA

底本・公開情報

底本
Carlos de Sigüenza y Góngora, Infortunios de Alonso Ramírez, in Colección de libros raros o curiosos que tratan de América, tomo XX, ed. Pedro Vindel, Madrid: Imprenta de la viuda de Gabriel Pedraza, 1902, pp. 17–132.
権利・利用条件
1690年原著および1902年復刻版はパブリックドメインです。Internet Archiveの公開記録は当該資料をNOT_IN_COPYRIGHTと表示しています。
公開日
更新日

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