書籍
HISTORY OF AMERICA · 1777–1796
原題The History of America
アメリカ史
1777年刊第1・第2巻/1796年刊第9書・第10書・日本語全訳
ウィリアム・ロバートソンが、新大陸の発見、スペイン人によるメキシコとペルーの征服、先住民の社会、植民地統治と交易を叙述した『アメリカ史』です。1777年刊の第1・第2巻と、ヴァージニアおよびニューイングランドの歴史を扱う1796年刊の第9書・第10書を、3冊の日本語全訳PDF・EPUBで収録しています。
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ウィリアム・ロバートソン『アメリカ史』第一巻は、古代以来のヨーロッパの地理的知識と航海の発展から、コロンブスの航海、カリブ海への植民、スペイン人の大陸進出へ至る過程をたどります。後半では叙述の方法を変え、アメリカの自然環境と先住民の身体、社会、生活を総合的に論じます。発見と征服の経過を、商業、政治、知識の変化という広い歴史の中に置いた十八世紀の著作です。
前半は、フェニキア人やカルタゴ人などの航海と交易、ポルトガル人による探検を振り返り、新しい航路の開拓を可能にした条件を説明します。コロンブスの計画がどのように拒否され、支持を得たか、航海と植民がどのような困難に遭ったかを詳しく述べます。船の喪失や救援の遅れ、宮廷の判断を含め、個人の構想と国家の政策が作用し合う物語として展開します。
続いてフロリダ方面への遠征やバルボアの活動を取り上げ、島々から大陸へと進出の範囲が広がる過程を描きます。住民の支配と労働の問題も関心の対象であり、スペイン人の行動をただ列挙するのでなく、その動機と結果を評価します。限られた人数で広大な土地を占有しようとすることへの考察には、植民事業と「文明化」を結びつける当時のヨーロッパ的な発想が表れています。
第四書の主題となる先住民論では、気候や地理、人々の身体と精神、社会的な結びつき、戦争、舞踊などの慣行を比較します。著者は先行するスペイン人の記録が、能力の不足や偏見によって不完全だと指摘する一方、自らも社会を発展段階によって位置づけます。地域差を考えようとする箇所と、広い範囲の人々を一括して論じる箇所の両方が見られます。
注記と補説では航海記、博物誌、宣教師の記述などを挙げ、本文の説明を裏づけ、異なる説を検討します。これは現地での目撃記ではなく、複数の文献を比較しながら構成した歴史です。「未開」などの評価や環境から人々の性質を説明する議論を現在の知識と混同せず読むことで、初期接触史の総合的な見通しと、啓蒙期の歴史家が世界の多様性を整理した方法の双方を知ることができます。
第2巻の詳細概要 第2巻の詳細概要を閉じる
『アメリカ史』第二巻は第五書から第八書を収め、メキシコとペルーの征服、両地域の征服以前の社会、スペイン領アメリカの統治と経済を一続きに論じます。第一巻の発見史と広い先住民論に対し、政治的に大きな組織を持つ社会への侵入と、その後に作られた植民地制度が中心となります。軍事的な出来事から法、労働、交易へと論点を移し、征服が長期的な支配に変わる過程を描いています。
メキシコ征服では、キューバでの遠征準備、コルテスの行動、先住民勢力との同盟、首都における危機と戦闘が扱われます。著者は指揮官の判断力や野心を評価し、勝敗を決めた政治的・軍事的な条件を説明しようとします。ペルーではピサロらの困難な探検から征服へ進み、キト方面への進出やスペイン人内部の対立を追います。征服者の成功と残酷さが同じ叙述の中に置かれます。
支配権が確立した後も、新たな法律に対する反発や裁判官の措置などが続き、征服の終結が政治的安定を意味しないことが示されます。先住民の文明を論じる部分では、暦による時間計算、建物や神殿、政治や社会の仕組みなどを取り上げます。個々の技術や制度を「進歩」の証拠として測る方法は、著者が人間社会を段階的に比較する立場に基づいています。
植民地の統治と経済については、地方の区分、労働の徴発、鉱山生産、スペインの貿易制度などを検討します。ミタによる交替労働の説明では、規則の目的と住民が負担する労役の関係が問題となります。銀の産出や課税、海上交易に関する記述は、アメリカの征服がヨーロッパとアジアを含む商業の連鎖へ組み込まれていく姿を伝えます。
巻末には注記と補説、書簡内容の短報、スペインの書籍・写本目録、索引が付きます。ラス・カサスをどのように扱うかなど、著者が史料の信頼性を判断する過程も示されます。その判断自体にも十八世紀の価値観が働くため、先住民社会の評価や征服者像は批判的に読む必要があります。戦争の経緯と植民地制度の分析を結びつけた本巻は、ロバートソンの歴史構想を最も具体的に見ることのできる部分です。
第9書および第10書の詳細概要 第9書および第10書の詳細概要を閉じる
ロバートソンの死後に刊行された『アメリカ史』第九書・第十書で、ヴァージニアの一六八八年までの歴史と、ニューイングランドの一六五二年までの歴史を扱います。スペイン領を主題とした既刊の二巻に対し、イングランド人が北米で植民地を形成した経緯が中心となります。巻頭の告知は著者の当初の構想を説明するが、本書にない地域や時代を補って完成させたものではありません。
第九書はイングランドの航海と探検の試みを振り返り、植民計画の発生と挫折、恒久的な入植への移行を述べます。失敗した植民団の成果として、ハリオットによる土地と住民の観察を評価します。ヴァージニアでは食糧不足、スミスによる物資確保、出資者と王室の特許状、入植地の拡大が重要となります。事業へ投じられた資金と渡航者数にも触れ、植民を探検家の冒険だけでなく、資本と人口を必要とする困難な組織的事業として捉えています。
その後は植民地の政治、本国の政変との関係、通商規制、ベイコンの反乱を扱います。総督の権威と住民の不満、先住民との戦争が結びつき、地方の危機が深まる様子を描きます。タバコの需要と人口増加の説明もあり、自由の制限や対立が存在しても植民地経済が拡大し続けたことを、政治と商業の双方から考察します。
第十書はニューイングランドへの移住を宗教対立の背景から説き起こします。ブラウン派などの教会観、会衆の自治、ピューリタンの移住、マサチューセッツ湾会社の権限が論じられ、交易会社が現地の統治組織へ変わることの法的な問題にも注意が向けられます。宗教上の自己決定が政治制度の形成に及ぼした作用を追う点が、ヴァージニアの叙述との大きな違いです。
先住民との戦争ではピクォートへの攻撃と虐殺、捕虜の奴隷化を記し、勝者の残虐さを批判する一方、先住民に対する蔑視を含む当時の語彙も残ります。クロムウェルによるジャマイカ移住の提案とその辞退は、植民者がすでに北米の土地へ愛着を持っていたことを示す逸話として置かれます。本書は二つの植民地社会の異なる成立条件を比較し、自治、信仰、通商、暴力の関係を検討するための歴史叙述です。
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- 原刊
- ダブリン、1777年/ロンドン、1796年
- 翻訳版
- 1051頁
- 日本語訳表紙
- 1点
- 原刊言語
- 英語
SOURCE & PUBLICATION DATA
底本・公開情報
- 底本
- William Robertson, The History of America, vols. I–II, Dublin, 1777; Books IX and X, London, 1796.
- 権利・利用条件
- 原著は保護期間満了によりパブリックドメインです。1777年刊第1・第2巻のWellcome Library提供画像はPublic Domain Mark 1.0(https://creativecommons.org/publicdomain/mark/1.0/)。1796年刊本には公開機関の個別ライセンス指定がなく、本訳には同刊本の原刊画像を転載していません。Internet Archiveの権利方針:https://help.archive.org/help/rights/。各冊の前文に底本URLと権利表示を記載しています。
- 各分冊の底本・公開条件
-
第1巻
アメリカ史 第1巻
The History of America, Volume I
- 原刊
- ダブリン、1777年
- 構成
- 日本語版PDF 425頁
- 底本
- William Robertson, The History of America, Volume I, Dublin, 1777.
- 権利・利用条件
- 底本:1777年ダブリン刊第1巻。原著:保護期間満了(パブリックドメイン)。所蔵・提供:Wellcome Library/公開:Internet Archive。公開機関の権利表示:Public Domain Mark 1.0。底本:https://archive.org/details/b30414854_0001 権利表示:https://creativecommons.org/publicdomain/mark/1.0/
第2巻
アメリカ史 第2巻
The History of America, Volume II
- 原刊
- ダブリン、1777年
- 構成
- 日本語版PDF 501頁・口絵1点
- 底本
- William Robertson, The History of America, Volume II, Dublin, 1777.
- 権利・利用条件
- 底本:1777年ダブリン刊第2巻。原著:保護期間満了(パブリックドメイン)。所蔵・提供:Wellcome Library/公開:Internet Archive。公開画像(口絵を含む)の権利表示:Public Domain Mark 1.0。底本:https://archive.org/details/b30414854_0002 権利表示:https://creativecommons.org/publicdomain/mark/1.0/
第9書および第10書
アメリカ史 第9書および第10書
The History of America, Books IX and X
- 原刊
- ロンドン、1796年
- 構成
- 日本語版PDF 125頁
- 底本
- William Robertson, The History of America. Books IX. and X. Containing the History of Virginia, to the Year 1688; and of New England, to the Year 1652. London: A. Strahan; T. Cadell Jun. and W. Davies; Edinburgh: E. Balfour, 1796.
- 権利・利用条件
- 底本:1796年ロンドン刊第9書・第10書。原著:保護期間満了(パブリックドメイン)。電子化・公開:Internet Archive。公開機関の個別ライセンス指定はない。本冊は原著本文の和訳で、原刊画像は転載していない。底本:https://archive.org/details/bim_eighteenth-century_the-history-of-america-_robertson-william_1796 公開機関の権利方針:https://help.archive.org/help/rights/
- 公開日
- 更新日
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第1巻
アメリカ史 第1巻
425頁第2巻
アメリカ史 第2巻
501頁第9書および第10書
アメリカ史 第9書および第10書
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