トラスカラ市・州およびその共和国の歴史の表紙

書籍

HISTORIA DE TLAXCALA · MS. MEXICAIN 210

原題Historia de la ciudad y provincia de Tlaxcala y su república

トラスカラ市・州およびその共和国の歴史

BnFメキシコ写本210 f. 30r–93v(欠首・欠尾)

Diego Muñoz Camargoディエゴ・ムニョス・カマルゴ

トラスカラの地理、自然、諸集団の由来、社会と宗教、メシカとの対立、スペイン人との同盟、征服戦争を叙述する植民地期の歴史書。フランス国立図書館所蔵メキシコ写本210の現存範囲 f. 30r–93vを、欠首・欠尾を補わず訳出しています。写本画像を最終根拠とし、現代版の編者注・注番号・注データは使用または収録していません。

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ムニョス・カマルゴによる、トラスカラの土地、住民、宗教、政治とスペイン征服を叙述した植民地期の歴史書です。現存写本は文中から始まり、末尾も途切れるため、本書が伝えるのは作品の残された範囲です。そのなかに、諸集団の起源と移住、集落、自然環境、祭祀、メシカとの対立、スペイン人との同盟と戦争が収められます。トラスカラをメキシコ征服の周辺的な協力者としてだけでなく、独自の過去を持つ政治社会として描こうとする歴史です。

起源の叙述では、海峡を渡って来たという伝承や神カマシュトリ、移動の経路と古い集落の所在が語られます。地域の成立は、土地に残る場所の記憶と、祖先や神に関する物語を組み合わせて説明されます。地理と自然についても、山、湖、森林、植物、産物を詳しく取り上げます。著者が宿駅の近くで経験した激しい地震と山の崩落を述べる部分は、伝承の採録だけでなく、本人の見聞が地域の説明へ組み込まれていることを示します。

社会と宗教の記述では、祭礼、捕虜、供犠、身体を用いた儀礼などが具体的に描かれます。その後にスペイン人の到来が、船や人の姿を初めて見た住民の驚きと恐怖として語られ、戦争と同盟へ進みます。著者は異なる主体の行動をトラスカラの経験から配置し、征服の過程における同地域の役割を強く意識しています。儀礼への評価や、到来者を神々と思ったという説明には、征服後に過去を語る立場が反映されているため、当時の全住民の直接的な証言と同一視はできません。

終盤にはコチニールの生育と栽培のような、地域の生産に関わる詳しい説明もあります。サボテンの葉の向きや雨風を避ける工夫まで述べることから、自然誌が単なる景観描写ではなく、人びとの技術と暮らしの記録でもあることが分かります。作品の欠けた部分を想像で補わず、残された文章の連なりを読むと、起源、都市、戦争、宗教、産物が同じ地域史の要素として組み込まれています。トラスカラの歴史的な立場を主張する語りと、身近な土地への細かな観察の双方を持つ著作です。征服史を一つの帝国の勝敗だけでなく、複数の先住民社会の関係と、植民地期にその関係を語り直す営みから考える手掛かりになります。

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原刊
ヌエバ・エスパーニャ、16世紀末、写本(未刊)
翻訳版
184頁
図版・挿図
0点
原刊言語
スペイン語・ナワトル語

SOURCE & PUBLICATION DATA

底本・公開情報

底本
Diego Muñoz Camargo『Historia de la ciudad y provincia de Tlaxcala y su república』、Bibliothèque nationale de France, Département des Manuscrits, Fonds mexicain, Ms. mexicain 210、f. 30r–93v。
権利・利用条件
16世紀の原著本文はパブリックドメインです。Gallica/フランス国立図書館の写本画像は本文の読解・照合に用い、日本語版へ転載していません。
公開日
更新日

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