書籍
HERE AND THERE IN YUCATAN · 1889
原題Here and There in Yucatan: Miscellanies
ユカタンのあちこち
雑録・1889年版本文1–146頁 日本語全訳
ユカタン沿岸、ムヘーレス島、コスメル、カリブ人、井戸・洞窟、マヤの宗教・文献・共同体生活などを扱う紀行・雑録集。1889年J. W. Lovell版の序文、目次、本文1–146頁、原注、所蔵本外装、原刊表紙・前付、口絵と本文図版、巻末商品広告を省略なく収録しています。
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アリス・D・ル・プロンジョンによる、ユカタンの沿岸と島々、住民の暮らし、遺跡、伝承、宗教を扱う紀行・雑録集です。ムヘーレス島、コスメル、ベリーズ周辺などでの経験に、マヤの共同体生活や文献、寓話、恋物語、賢者の言葉を組み合わせます。旅程を一方向に追うだけの構成ではなく、「海亀捕りの人々の間で」「驚くべき井戸と洞窟」など主題ごとの文章を通して、海岸の生活と内陸の文化への関心を往復します。
海辺の章では漁師の小屋、舟、海亀、航海、難破や積荷をめぐる争いが登場します。島の人びとの暮らしは、漁業だけでなく交易、密輸、漂着物の回収と結びついており、夜の上陸や船に残された品物の話から、港の公式な秩序とは別の実務が見えてきます。海賊ラフィットにまつわる記憶も取り上げられ、沿岸に伝わる人物像と著者の旅行体験が交わります。風景の美しさと生活の不安定さが同じ文章のなかに置かれている点が特徴です。
マヤの社会と信仰を扱う章では、元日の儀礼、共同体の規則、失われた文献、日食・月食をめぐる考え方などが論じられます。シュ・ウアイウルのランチョについて、共同で畑を耕し産物を分配し、食事も一か所で調理して家族人数に応じて受け取ると記す部分は、労働と消費の仕組みを具体的に伝えます。婚姻の範囲や共同体の束縛にも関心が向けられ、暮らしを支える連帯と、個人に課される制約の両面を捉えようとしています。
寓話や恋物語、井戸と洞窟、写本の説明は、目に見える土地の姿と過去の文化をつなぐ役割を果たします。ただし、著者が聞いた伝承、実際に見た場面、古代マヤについての解釈は同じ種類の証拠ではありません。宗教を「偶像崇拝」や「迷信」と呼ぶ表現、他地域の月食伝承との比較にも、十九世紀の観察者の価値観が表れます。それぞれの文章の語り方を確かめながら読むと、マヤの人びとを遺跡の背景にとどめず、同時代の生活者として描こうとする関心と、その理解の限界の双方が見えてきます。考古学に関わる旅行者の視野が、島の交通、家庭、口承文学へ広がった一冊です。
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- 原刊
- ニューヨーク、1889年
- 翻訳版
- 116頁
- 図版・挿図
- 18点
- 原刊言語
- 英語
SOURCE & PUBLICATION DATA
底本・公開情報
- 底本
- Alice D. Le Plongeon『Here and There in Yucatan: Miscellanies』(New York: John W. Lovell Company、1889年)。
- 権利・利用条件
- 原刊本文・図版はパブリックドメインです。Library of Congressは当該コレクションの書籍を自由に利用・再利用できると表示し、クレジット表記を求めています。
- 公開日
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