書籍
CITÉS ET RUINES AMÉRICAINES · 1863
原題Cités et ruines américaines
アメリカの都市と廃墟
1863年刊・本文、注、図版解説 日本語全訳
フランス人写真家デジレ・シャルネが1858年から1861年のメキシコ旅行と遺跡調査をまとめ、ヴィオレ=ル=デュクの建築論を付した1863年刊行書。序文、建築論、全17章の旅行記、原注、図版解説、目次を全訳し、本文挿図13点と原刊図版49点を収録しています。図版は番号、尺度、文字、署名、余白を残して無裁断で収録し、図版V–VIとXLV–XLVIの連結パノラマは分割していません。
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写真家デジレ・シャルネが、一八五八年から一八六一年にかけてのメキシコ旅行と遺跡調査をまとめた著作です。ヴィオレ=ル=デュクによる古代建築の論考と、シャルネの全十七章の旅行記、写真を中心とする図版が組み合わされています。著者は従来の旅行者の記述や図に不確かさを感じ、自分の記録の正確さを支える「証人」として写真を選んだと述べます。旅の冒険と遺跡の視覚的記録が、一つの研究計画を構成している点が特徴です。
行程はベラクルスからメキシコ市へ進み、オアハカとミトラ、ユカタンのイサマル、チチェン・イツァ、ウシュマル、ウスマシンタ川、パレンケ、チアパス、テワンテペクへ広がります。都市の街路、聖週間、葬儀、劇場、闘牛、プルケ酒場、村の役人、荷運び人など、遺跡へ向かう途中の生活も細かく描かれます。道路の悪さ、盗賊、護衛、飢え、宿泊の苦労、政治的な包囲戦は、調査を支えたり妨げたりする現実の条件として物語に組み込まれます。
遺跡では宮殿や神殿、装飾、浮彫、モザイク、建物の配置を観察し、写真の撮影を試みます。ミトラでの原板の喪失やパレンケでの失敗も語られ、写真が自動的に対象を記録したわけではなく、移動、機材、環境、作業の成否に左右されたことが分かります。建築論では各地の遺構を比較し、その構造や意匠から文化的な関係を説明しようとします。旅行者の現場の経験と、図像を用いて建築を論じる専門家の視点を並べて読める構成です。
写真は当時の遺構の状態を知る資料ですが、写る範囲や選ばれた建物、添えられた説明は著者たちの関心を反映しています。また、先住民の暮らしに対する評価や古代文化の起源をめぐる説には、十九世紀ヨーロッパの文明観が強く現れます。それらを現在の事実認識と混同せず、観察された形態、撮影の記録、歴史解釈を区別することが重要です。本書は、メキシコの遺跡が写真によって国際的に紹介される過程を示すとともに、考古調査が同時代の社会と政治のなかで行われたことを伝えています。古代建築だけでなく、写真史と旅行記の双方から読むことができる著作です。
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- 原刊
- パリ、1863年
- 翻訳版
- 391頁
- 図版・挿図
- 62点
- 原刊言語
- フランス語
SOURCE & PUBLICATION DATA
底本・公開情報
- 底本
- Désiré Charnay/Eugène-Emmanuel Viollet-le-Duc『Cités et ruines américaines』(Paris、1863年)。本文巻とアトラスを統合。
- 権利・利用条件
- 原刊本文・写真はパブリックドメインです。Internet Archiveの当該項目には個別のrights/licenseurl表示がありません。Project Gutenbergの転記は本文照合に、New York Public Libraryの公開画像はアトラス照合に用い、各公開元の画像を日本語版へ転載していません。
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