中央アメリカ史の表紙

書籍

HISTORY OF CENTRAL AMERICA · 1886–1887

原題History of Central America

中央アメリカ史

全3巻・1501–1887年 日本語全訳

Hubert Howe Bancroftヒューバート・ハウ・バンクロフト

ヒューバート・ハウ・バンクロフトが、スペイン勢力の到来と初期征服から植民地統治、独立、中央アメリカ連邦の解体、各共和国の1887年までを三巻で叙述した通史です。原刊前付、全98章、原注4,325件、図表、第I巻引用典拠一覧、第III巻索引を備えた日本語全訳を、原著と同じ三巻のPDF・EPUBで収録しています。

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バンクロフト『中央アメリカ史』第一巻は、1501―1530年を主要な対象期間として、スペイン勢力が地峡へ到達し、各地に征服と入植の拠点を築く過程を扱います。冒頭のスペイン社会と文明についての考察、古い地理知識と発見の概観、コロンブスの初期航海の叙述は、その前提を整える部分です。続いてダリエンとホンジュラス、ニカラグア、コスタリカの沿岸へ焦点が移り、海上の探索が陸上の支配に転じる経過を追います。

前半の中心はダリエンです。サンタ・マリア・デ・ラ・アンティグアの建設、食糧徴発と派閥抗争、バルボアの太平洋到達、ペドラリアスの政権掌握と遠征が叙述されます。植民者同士の対立やバルボアの最期は、探検の成果だけで統治者の地位が定まるわけではなかったことを浮かび上がらせます。北岸の入植地が衰退する過程も含め、町の建設をそのまま安定した植民地の成立とみなさない構成になっています。

中盤ではヒル・ゴンサレスのコスタリカ・ニカラグア方面での活動、パナマ湾周辺での略奪、ホンジュラスの植民、コルテスの長い行軍が取り上げられます。遠征者の指揮権が重なることによる争い、競合する総督の任命、ペドラリアスのニカラグアへの移動を通じ、地峡の諸地域が互いに連動していた様子が見えます。遠征の進行を理解するうえで、航路だけでなく、補給、政治的承認、既存の入植地との関係も重要になります。

後半はアルバラドのグアテマラ進軍に重点を移し、キチェ国の滅亡、カクチケルやツトゥヒルとの関係、エルサルバドル遠征、カクチケルの反乱へ至ります。これにより第一巻は、スペイン人の到着だけでなく、先住民側の交渉や抵抗によって征服の経路が変わる時期を収めています。巻頭の引用典拠一覧と多数の原注は、著者が異なる年代記や史料をどのように利用したかを確認する手掛かりです。ただし文明や人種、征服者の人物像への評価には19世紀の歴史叙述の枠組みが表れており、記述された事件と著者の道徳的判断を区別して読む必要があります。

第一巻だけを読む場合にも、ダリエンから北方の高地へと移る章の順序によって、征服の複数の入口を比較できます。沿岸の拠点形成と内陸の王国との戦争の違いが、叙述の規模と細部に現れています。

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『中央アメリカ史』第二巻は1530―1800年を主な枠とし、征服後の統治、教会活動、海賊の襲撃、スペイン以外の勢力の進出をまとめます。冒頭はピサロとペルー、カスティーリャ・デル・オロ、ベラグアの植民を取り上げる一方、グアテマラのカクチケルの反乱など、第一巻の出来事にさかのぼって地域ごとの経過を補います。年代の区切りを機械的に守るより、各地方の政治と社会の推移をまとまって示す編成です。

16世紀の部分では、アルバラドのペルー遠征と最後の遠征、ホンジュラスとニカラグアの行政、コスタリカやチアパスの征服が扱われます。土地分配や先住民労働をめぐる利害、役人の査察、アウディエンシアの機能に触れ、支配を維持する制度の形成を追います。マロキン、ラス・カサス、グアテマラやチアパスの聖職者を扱う章は、布教だけでなく、植民者と教会の対立や先住民の待遇をめぐる議論も含んでいます。

中盤以後には海上からの攻撃が大きな主題として現れます。ドレークとオクセナムの遠征、バッカニアの活動、パナマとポルトベロへの襲撃、モーガンの地峡侵攻、南海の海賊を順に追い、都市と交易路が軍事的な競争の場となる様子を描きます。パナマの歴史はペルーとの交通と結びつけて記されるため、地峡が大陸間の連絡地点であることと、襲撃にさらされやすいことが同時に理解できます。

終盤はモスキティア、ベリーズ、ホンジュラス、グアテマラ、チアパスなどの18世紀までの動向を地域別にまとめ、イツァとラカンドンを扱う章も置きます。スペインの統治が中央アメリカ全域に均等に及んでいたわけではなく、沿岸部や森林地帯で異なる交渉と抵抗が続いたことを読むための巻です。叙述は年代記、行政関係資料、先行研究の引用と注記に支えられていますが、著者自身の人物評価や文明観も強く表れます。事件の筋道と史料の参照関係をたどりながら、植民地の秩序が繰り返し争われ、地域ごとに異なる形で維持されたという本巻の広い視野を確かめられます。

海賊を扱う長い一群の章と、内陸の布教・行政を扱う章を併せ読むと、海の防衛と陸の統治が別々には成り立たないことも分かります。地域ごとの経過をたどる構成が、数世紀にわたる支配の濃淡を示しています。

第III巻の詳細概要 第III巻の詳細概要を閉じる

バンクロフト『中央アメリカ史』第三巻は1801―1887年を対象に、植民地支配の終わりから独立、連邦の成立と解体、その後の各共和国の政治と社会を叙述します。最初の諸章ではスペイン統治最後の時期、独立の達成、メキシコとの合邦、中央アメリカ連邦の形成を順に追います。新しい国家の成立を一度の独立宣言で完結させず、憲法、議会、行政権、地方の利害が衝突する過程として描いています。

連邦期の内戦と解体を扱う部分では、自由派と保守派、聖職者、軍人、各地域の政治家の関係が重要になります。グアテマラとホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカの動向をそれぞれ追い、連合の再建に向けた試みがなぜ繰り返されたかを示します。カレラなどの指導者についての強い人物評価は、当時の政治文献を用いる著者の立場を反映し、単純な客観的描写としては扱えません。

19世紀半ばではウィリアム・ウォーカーのニカラグアでの戦役と、中央アメリカ諸国による対抗が大きく取り上げられます。さらにコスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグアの政治変動と、再統一への努力が続きます。パナマ地峡の独立、自治、革命を扱う章は、中央アメリカ諸国とは異なる政治的経路を同じ地峡史の視野に収める部分です。対外関係の記述にはモスキート海岸をめぐる英国との問題も現れます。

最後の諸章は政変の年代記から視点を広げ、制度、住民、教育や知的活動、司法と軍事、産業、商業、財政、両洋間交通をまとめます。独立国家の歴史を指導者の交代だけでなく、生活条件と経済的な連絡網の変化として読むための構成になっています。原注には法律集や同時代の歴史書への参照が多く、主張の典拠を追うことができます。一方、「民主政」「進歩」や民族集団についての言い方には19世紀の価値判断が含まれます。本巻は独立後の長い混乱を一望する通史であると同時に、その時代を後世へ伝える歴史家が何を進歩と捉えたかを検討する資料でもあります。

国家ごとの章と地域横断的な社会経済の章が併存するため、政治的な分裂と交通・交易のつながりを併せて考えられます。最終章の両洋間交通は、運河や通過路への関心を近代地峡史の結節点へ置いています。

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原刊
サンフランシスコ、The History Company、1886–1887年
翻訳版
2589頁
図版・挿図
75点
原刊言語
英語・スペイン語

SOURCE & PUBLICATION DATA

底本・公開情報

底本
Hubert Howe Bancroft, The Works of Hubert Howe Bancroft, vols. VI–VIII, History of Central America, vols. I–III (San Francisco: The History Company, 1886–1887).
権利・利用条件
1886–1887年刊の原著本文はパブリックドメインです。Internet Archiveの上記3項目は権利状態をNOT_IN_COPYRIGHTと表示し、別個のCreative CommonsライセンスURLは掲示していません。Project Gutenbergの3電子本は米国でPublic domainと表示され、Project Gutenberg Licenseの条件で配布されています。
各分冊の底本・公開条件

第I巻

中央アメリカ史 第一巻

History of Central America, Volume I

原刊
サンフランシスコ、The History Company、1886年
構成
前付・引用典拠一覧・全27章・原注・図表・PDF 924頁
底本
Hubert Howe Bancroft, The Works of Hubert Howe Bancroft, vol. VI, History of Central America, vol. I (San Francisco: The History Company, 1886).
権利・利用条件
1886–1887年刊の原著本文はパブリックドメインです。Internet Archiveの上記3項目は権利状態をNOT_IN_COPYRIGHTと表示し、別個のCreative CommonsライセンスURLは掲示していません。Project Gutenbergの3電子本は米国でPublic domainと表示され、Project Gutenberg Licenseの条件で配布されています。

第II巻

中央アメリカ史 第二巻

History of Central America, Volume II

原刊
サンフランシスコ、The History Company、1886年
構成
前付・全37章・原注・図表・PDF 766頁
底本
Hubert Howe Bancroft, The Works of Hubert Howe Bancroft, vol. VII, History of Central America, vol. II (San Francisco: The History Company, 1886).
権利・利用条件
1886–1887年刊の原著本文はパブリックドメインです。Internet Archiveの上記3項目は権利状態をNOT_IN_COPYRIGHTと表示し、別個のCreative CommonsライセンスURLは掲示していません。Project Gutenbergの3電子本は米国でPublic domainと表示され、Project Gutenberg Licenseの条件で配布されています。

第III巻

中央アメリカ史 第三巻

History of Central America, Volume III

原刊
サンフランシスコ、The History Company、1887年
構成
前付・全34章・原注・図表・索引・PDF 899頁
底本
Hubert Howe Bancroft, The Works of Hubert Howe Bancroft, vol. VIII, History of Central America, vol. III (San Francisco: The History Company, 1887).
権利・利用条件
1886–1887年刊の原著本文はパブリックドメインです。Internet Archiveの上記3項目は権利状態をNOT_IN_COPYRIGHTと表示し、別個のCreative CommonsライセンスURLは掲示していません。Project Gutenbergの3電子本は米国でPublic domainと表示され、Project Gutenberg Licenseの条件で配布されています。
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